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Rice menu NAVI 次世代シェフが手掛けた
「新ガンボ」

森枝幹 株式会社eat creator Executive Director Chef

2021年2月2日
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道はオーストラリアにあり

道はオーストラリアにあり
お父さま(写真家・食文化研究家の森枝卓士氏)の影響で、当時はまだ珍しかったスパイスや食材が、身近にあったとか。

パクチーやナンプラーが、当たり前にありました。テーブルの上に転がっているトウガラシを食べて、めちゃめちゃ辛かった記憶も(笑)。今から30年くらい前のことです。父は、まだあまり知られていなかった東南アジアの食文化を紹介した人間だったので、そうした食材が、家に結構ありました。

小学生の頃は、(父と)一緒にカレー用の玉ねぎを炒めたりした記憶がありますが、中学の途中からバレーボールをはじめてからは、スポーツ漬けでした。

高校時代は都大会で優勝し、全国大会にも出場された。オーストラリアに渡り、「Tetsuya’s」で修業をはじめた頃も、まだ、バレーボール選手への夢を持っていたんですよね

向こうでは、長時間勤務にならないよう、働く時間がきちんと管理されているんです。それで、朝、割と時間があって、ビーチバレーを教わっていました。でも、コーチをお願いしていた、元オリンピック選手の力がすごすぎて、プロにはなれないと心が折れた感じでした。

道はオーストラリアにあり
そこから料理に真摯に向き合われた。とはいえ、すでに、高校を出て、調理師専門学校も卒業されていた。料理人になるのは、やはり、必然だったと感じましたか。

小さい頃から食べるのが好きだったし、(父親の影響もあって)漠然と、そうなるだろうなという思いはありました。「Tetsuya’s」では、アジア、ヨーロッパ、アメリカ系と、国や人種が異なる同世代の仲間たちがいた。彼らが世界中に散らばって、「来たぜ!」って訪ねたりして、今も仲良くしています。(オーストラリアでは)料理のジャンルにこだわらない、自由な発想に大きな刺激を受けました。

帰国後は、「湖月」で日本料理を学ばれました。紹介などのご縁があったのでしょうか。

自分で探したんです。何度か食べにも行って。(料理人として)もう一度海外に出るなら、和食を知っておかなくてはいけないと思った。3年間お世話になり、四季に応じた食材や調理、おせち作りも経験し、日本料理の美味しさのバランスを知ることができました。

水産資源に関する問題意識に芽生えたのは、その頃ですね。

佐藤さん(「湖月」のオーナー)も、築地市場の人も、魚が少なくなった、高い、とおっしゃっていて、大変な状況にあることが分かった。家にも、そういう(水産資源に関する)専門書が何冊もあったし、自分なりに勉強するようになりました。

面白く作り、フラットに食べる

再び海外を目指していたタイミングで、「タパス モラキュラーバー」からお声が掛かり、そこで分子ガストロノミーを学ばれ、2014年に「Salmon & Trout」をオープン。独創的な料理で注目を集めました。

僕は「この場所でどうするのか?」を考えるのが好きで。(Salmon & Troutが立地する)代沢は、青山や恵比寿のような場所とは違う。ここでできる面白いこと、ここにお客さんが集まる意味って、どういうことだろう? と考えてお店を作りました。

ブラックバスに象徴される食材選びも、その答えの一つですか。

驚かそうとしているわけではなくて、必然があるから。ブラックバスなどの未利用魚については、ガストロノミーの世界の人たちにも使ってほしいと思った。気付いてもらうために、作為的にやっていました。(水産資源の)環境は危機的な状況にある。誰かがやらないといけない。みんなが面白いと思って、振り向いてくれるようなアプローチを考えたわけです。

2017年の設立当初から関わる「Chefs for the Blue」では、持続可能な水産資源に向けて、さまざまな啓蒙活動に取り組まれています。

漁業法が改正されるなど(※)、目に見える形で、変化があったのはいいことだと思いますが、まだまだ足りないし、時間も無い。もっと進めないといけない。
※「持続可能性」が法律に組み込まれ、2020年12月1日に施行。

現在は、2019年にオープンしたガストロノミータイ料理「CHOMPOO」を中心に活動されています。タイ料理へ寄せる思いは?

オーストラリアにいた当時、いろいろなジャンルのレストランがいっぱいあって、みんなフラットに楽しんでいて、すごくいいなと思った。日本だと、タイ料理を下に見るような感じがありますよね。現状の日本に対するアンチテーゼというか、ジャンルにこだわらず、フラットに食べられる国になってほしいんです。

タイ料理は昔からなじみがあるし、ガストロノミーも面白い。「Salmon & Trout」では、年に2回ほど、バンコクの「80/20」(※)とコラボしていました。現地を訪ね、オーナーシェフと一緒に山に入って山菜を採ったり、神経締めを勉強したり。食材の共通点もあって面白かった。まだまだ、みんなが知らないタイ料理があります。 
※独創的な調理法でタイ料理に革新をもたらした人気レストラン。

“森枝スタイル”の「新ガンボ」

今回は、「家庭向け」と「プロ向け」、2種類のガンボをご提案いただきました。

アメリカ人の友人から、「ガンボ」で大切なのは、空と海と陸のタンパク質を(それぞれ1種類以上)使うことだと教えてもらい、メイン食材に使用しました。

「家庭向け」のほうは、アメリカ南部のレシピに割と忠実に。野菜は、大きめにざくざく刻む感じです。歯触りや食感が出るように、鴨の皮目をきれいに焼き、オクラもしっかり焼き切る。

市販のケイジャンスパイスだけだと、多めに入れても味が広がらない。ポイントはチリパウダーです。最後に加えるのが、ウスターソースとタバスコ。フライパンを2つ使って、調理時間の目安は、30~40分です。

「プロ向け」は、家にあった『世界の料理』(※)を調べて参考にしつつ、現在のアメリカのレシピもチェックしながら、作りました。野菜は食感を感じさせないほど、細かく刻む。オクラは粘りを取るように、最初に炒める。ルーに入れる玉ねぎは、甘さが出ないよう、すっきりさせるのがポイントです。ルーは、重めにしっかりと仕上げます。

最後に、細切りにした、あさつきと青唐辛子を載せ、レモンを少し絞る。軽い酸味で、(重めの後味を)すっと抜きたい。「家庭向け」で、ウスターソースとタバスコを加えたのも同じ狙いです。
※1970年代にタイムライフ社から出版された料理本シリーズ。レシピに留まらず、各国・地域の歴史や風土が豊富に記されているのが特徴。

プロ向け「ポーク、鴨と牡蠣のガンボ」
プロ向け「ポーク、鴨と牡蠣のガンボ」
レシピはこちら
家庭向け「鴨とハムとシーフードのガンボ」
家庭向け「鴨とハムとシーフードのガンボ」
レシピはこちら

ガンボと好相性のカルローズ

ガンボと好相性のカルローズ
カルローズの印象はいかがでしたか。

普段からジャスミンライスを使っているので、なじみがあります。長粒種と短粒種の間で、いい感じでした。普通の水加減で軽めに炊ける。ルーを使った粘度の高いガンボやカレーのような料理はもちろん、いろいろなジャンルの料理が好きな人は、もっと積極的に使えばいいのにと思います。

家庭でも、さまざまな洋食を作る今、おコメ選びに幅ができると、美味しさが広がると思うのですが。

漬物や、佃煮のような煮詰めた固形のもの、粘度が少ない汁物など、昔から日本で食べている料理には、もっちりした粘度の高いおコメが合うのは、理にかなっていると思います。

一方で、今は、シチューと一緒におコメを食べたりする。ハンバーグにソースをたっぷりかけたり、サラダで食べたりするのを考えると、おコメはサラサラしていてもいい。
今の食事のスタイルには、カルローズのようなおコメが合うのではないでしょうか。僕は普段からササニシキが好きで、粘りが強いコシヒカリ系のおコメが得意じゃないから、余計にそう思いますね。

どんな方にガンボをおすすめしますか。

アメリカの南部料理・ガンボは、日本におけるカレーライスのような家庭料理。年代問わず、好きになってもらえると思うし、カレー好きな人は、ガンボにはまってもいいと思いますよ。カレーのように広がらないのは、これがガンボだっていう、答えになる味を教えてくれるお店が、あまりないからかも。カフェでやるなら、簡単に作れますよね。カレーよりも、ガンボのほうが格好良くないですか?

ルーや具材の切り方をアレンジするだけで、差別化できる。羊を使っても美味しくなると思うし、シーフードガンボもある。骨付きのもも肉を使って、くたくたになるまでコンフィみたいにしても美味しい。トマトの代わりにワインを使えば、もっと、レストランっぽくなる。今回、カルローズを使った新メニューとして、ガンボと向き合い、めちゃめちゃ調べましたが(笑)、いろいろな可能性があって、興味が増しました。

森枝 幹さん
株式会社eat creator  Executive Director Chef  代表 森枝 幹(もりえだ かん)

Profile 株式会社eat creator Executive Director Chef 森枝 幹(もりえだ かん)

辻調理師専門学校を卒業後、渡豪。伝説の料理人・和久田哲也氏が創業したシドニーの名店「Tetsuya’s」で、料理界へ。帰国後は、日本料理店「湖月」、分子ガストロノミーで知られる「タパス モラキュラーバー」で研鑽を積み、2011年に独立。2014年、「Salmon & Trout」のシェフに就任。2019年、渋谷パルコにガストロノミータイ料理店「CHOMPOO」をオープン。手掛けた店舗プロデュースやメニュー開発も多数。持続可能な海を目指し、協働プロジェクトや啓蒙活動に取り組む「Chefs for the Blue」に、リードシェフとして参加。規格外の余剰野菜の活用や、ジビエ肉の食材PRにも携わり、環境とフードロスの両課題に向き合いながら、新たな食のスタンダード作りに取り組んでいる。

株式会社eat creator
住所
〒103-0003 東京都中央区日本橋横山町7-14
TEL
080-4361-1986
WEB
https://www.ec-corp.jp

Find out! Calrose 「ガンボのおコメ=カルローズ」

今回の発見は、ガンボと好相性のカルローズの食感と使いやすさ。
新メニューをご提案いただいた森枝さんから、現在の日本の食スタイルに好適、と評価をいただきました。

ガンボのおコメ=カルローズ ガンボのおコメ=カルローズ